言葉の芸術 音の芸術
この谷崎の小説には、生き生きとした昔の大阪弁が、息づく世界がございます。
声に出して読んでみると、今はもう滅びてしまった昔々の、祖父母の代の言い回しがあらゆるところに出てきて、なつかしいですわ。
それにしても谷崎の文章力はすばらしい。猫の仕草の描写と人間たちの心の葛藤がたまりまへん。すごい洞察力であります。
しかもなんという美的表現でありましょうか
モーツアルトは書簡の中でこう綴っています。
僕は詩的なものは書けません。詩人ではありませんから
僕は表現を巧みに描きわけて影や光を生み出すことはできません。
画家ではないからです.
そればかりか僕は、ほのめかしや身振りで僕の感情や考え方を表すこともできません。
僕は踊り手ではありませんから。
でも、音でなら、それができます。僕は音楽家ですから